原田泰「人道主義で繁栄したアメリカ。非人道人種差別主義の日本」

■原田泰

成長戦略では、人口を1億人に維持することが目標とされている。もちろん、
それを移民で実現すると言っている訳ではない。だが、海外からの労働者なしに、労働力人口を維持することは不可能だろう。

 多くの国の経験から言えば、労働者として来ても、いずれその国に定住することになるのが通常である。定住すれば、
それは移民とたいして変わらない。

 移民が移住国の利益になるかどうかは多くの研究があるが、結論ははっきりしない。移住国の利益になるような高度な
移民に来てもらえれば利益になるという、ほとんど同義反復に近い結論しか得られていないようだ(萩原里紗・中島隆信
「人口減少下における望ましい移民政策」経済産業研究所ディスカッションペーパー)。

 そこで、高度移民を取り込もうという政策が打ち出されているのだが、そのような人材は、すでに各国の取り合いにな
っているので、そううまい具合に日本には来てくれない。

 考えてみると、コストをかけずに高度な移民の流入で利益を得るチャンスがあった。ナチスユダヤ人を迫害した時で
ある。多くのユダヤ人が日本にも逃れてきた。普通の日本人は、この人々に同情的であったが、高度移民として遇しよ
うと考えたエリートはいなかった。

 一方、米国は、これこそが高度移民だと認識した。当時、米国は経済・軍事・政治大国ではあったが、知的、文化的に
は二流国だった。科学と文化の中心はドイツだった。ナチスに追われたユダヤ系の学者たちが米国に来ることで、米国
の知の水準は一挙に高まった。

ヒトラーが政権を奪取した1933年までで米国のノーベル賞(1901年発足)受賞者は5人(自然科学系のみ)しかいなかったが、
その後はほぼ毎年受賞者を出すようになり、2013年では6人である。米国は、自由の女神の台座にある「嵐に弄ばれた人び
とを送り届けよ」という、人道主義の言葉に従って、その知力を高めたのである。

 日本は、人道主義に則ることで知力を高める機会を逃した。実習制度はウソである。外国人労働者の雇用はタダ乗りである。ウソとタダ乗りでうまくいくはずはない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4078?page=3