石橋湛山とチキンホーク

 

第一次世界戦争の際、わが国には欧州出兵論があって、その請願運動を起した人もあった。(中略)しかし私は、この欧州出兵運動について、おもしろい事実を一つ発見した。ある時、二、三十人の者が集まってこの問題を論じた際、多数は出兵論であった。そこで私は最後に、一体諸君の中に欧州出兵の場合、自ら出征しなければならない人はだれかと聞いてみた。しかるに、予期したことではあるが、その中には私の外、軍籍にある者はひとりもなかった。すなわち彼らはいかなる戦争が起っても(当時の戦争の状況では)自分は安全の者ばかりであって、いわば他人のごぼうで御斎をする主張をしているのに外ならなかった。わたしはこのことを指摘して、とにかく私だけが諸君の犠牲になって、戦争に行って死ぬのはいやだといったら、彼らは一言もなかった。

 

石橋湛山『湛山回想』岩波文庫、134~135頁