シーテック事件 共謀罪 法務委員会 日本共産党 藤野保史

藤野委員 日本共産党藤野保史です。

 質問に先立ちまして、政府は、この一般質疑が終わった後、組織的犯罪処罰改正法、いわゆる共謀罪法案の趣旨説明、審議入りを強行しようとしております。この法案は、過去三回廃案になったものであり、行為主義という近代刑事法の大原則を覆すだけではなく、日本国憲法が保障する思想、良心の自由、表現の自由、適正手続保障などを侵害する、まさに違憲立法そのものであります。私たち日本共産党は、当委員会での共謀罪法案の審議入りに断固反対したいと思います。

 そのことを申し上げた上で、私も、共謀罪にかかわって質問をさせていただきます。

 金田大臣は、この間、先日六日の衆議院本会議でも、一般の会社や市民団体、労働団体は対象にならない、つまり一般の方々は対象にならないと繰り返し答弁をされました。しかし、本当にそうなのか。

 きょうは、実際に起きた事件を踏まえながら、警察活動の実態というものを見ていきたいというふうに思っております。

 まず、二〇一三年から一四年にかけて岐阜県で、岐阜県警大垣署による市民監視事件が起きたわけですが、大臣、この事件のことは御存じでしょうか。

金田国務大臣 御指摘の事案につきましては、私どもの事務方から聞いております。

藤野委員 聞いていらっしゃるということで、私の方で少し説明しますが、これは、岐阜県警大垣署の警察官によりまして、平穏な市民運動のメンバー、あるいはそれと無関係な個人の情報が収集され、それらの方々と利害が対立する民間企業にその情報が提供されていたという事件であります。

 具体的に言いますと、当時、大垣市で計画されていた風力発電事業、これが大規模なものでありまして、これに関する勉強会などを開いていた住民の皆さん方の思想信条、学歴、病歴そして現在の病状など、通常では到底知り得ないセンシティブ情報を相当長期間にわたって収集し、しかも、その情報を当該事業、風力発電事業を推進していた企業、これは中部電力の子会社シーテック社というところですが、たびたび繰り返し提供していたという事案であります。

 人権上大変な問題であり、現在、国家賠償を求めて提訴中なわけですが、過去二回、国会でも問題になっております、質問されております。

 警察庁に確認したいんですが、岐阜県警大垣署が中部電力の子会社シーテック社と風力発電施設建設をめぐって情報交換をしていた、これは事実ですか。

白川政府参考人 お答えいたします。

 今、議員御指摘の関係会社と岐阜県大垣警察署の警察官がお会いしていたということは、岐阜県警から報告を受けております。

藤野委員 どういった報告を受けているんでしょうか。具体的な中身を御答弁ください。

白川政府参考人 失礼いたしました。

 岐阜県警察からは、大垣署の警察官が関係会社シーテックの担当者と会っていたものということを報告を受けておりますが、それ以上の個別具体的な内容につきましては、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがありますので、差し控えさせていただきます。

藤野委員 これは幾ら聞いても出てこないんですね、支障が出るからという理由で。これはとんでもない話だというふうに思います。

 配付資料で見ていただきたいと思うんですが、これは、一方当事者であるシーテック社の方が作成した議事録であります。シーテック社は、朝日新聞の取材に対して、この議事録を作成したことを認めております。さらに、この議事録は、ぎふコラボ西濃法律事務所によって、裁判で使うために証拠保全されております。過去二回の国会審議でも紹介された資料でございまして、個人名も出ているわけですが、関係者の了解もいただいております。過去の資料でも同じような形で提出されておりますので、今回もこういう形で提出させていただきました。

 大垣署とシーテック社というのは、わかっているだけで四回会合しておりまして、きょう配付させていただいたのは、その第一回目の資料であります。実施年月日は二〇一三年八月七日、一時半から一時間。実施場所は大垣警察署別館三階。

 この「一」の「概要」のところを見ていただきますと、「大垣警察署警備課が「南伊吹風力の事業概要情報を必要としている」旨の連絡が当G」、グループだと思いますが、「に入ったので訪問した。」。

 警察庁にお聞きしたいんですが、これは大垣署の警備課からの呼びかけで行われた、こういうことで間違いないでしょうか。

白川政府参考人 お答え申し上げます。

 大垣署の警備課の警察官がシーテックの担当者と会っていたということは事実でございますが、ただいま議員お示しの議事録なるものにつきましては、報道等によりその概要は承知しているものの、私どもが作成したものではございませんので、これ以上の御答弁はちょっと申し上げかねるところでございます。

藤野委員 本当に答えないわけですね。本当にけしからぬと思います。

 その下の「二」の「打合せ内容」を見ていただきたいんです。これは、三角が大垣警察で、丸がシーテック社でありますが、黄色い線を入れておるところ、「同勉強会の主催者である三輪」「氏や松嶋氏が風力発電に拘らず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることを御存じか。」ということだとか、本当にそういう、人物、価値観そのものにかかわる内容であります。

 一枚めくっていただきまして、同じく警察の発言としまして、「大垣市内に自然破壊につながることは敏感に反対する「近藤ゆり子氏」という人物がいるが、御存じか。」これも警察の側から、御存じかという情報を提供しているわけですね。しかも、「本人は、六十歳を過ぎているが東京大学を中退しており、頭もいいし、喋りも上手であるから、このような人物と繋がると、やっかいになると思われる。 このような人物と岐阜コラボ法律事務所との連携により、大々的な市民運動へと展開すると御社の事業も進まないことになりかねない。 大垣警察署としても回避したい行為であり、今後情報をやり取りすることにより、平穏な大垣市を維持したいので協力をお願いする。」。ちょっと驚くべき内容であります。

 「大々的な市民運動へと展開すると御社の事業も進まない」、明らかに中部電力の子会社の側に立って、そういう事業を進める立場に立って、大々的な市民運動になる前に潰してしまおう、今の段階だと大々的になっちゃうかもしれないから、その前に潰そうという立場での発言であり、大垣警察署としてもそれを回避したいと言っているわけでありますね。

 いわゆる警察法二条には、警察の責務として、「不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」とあるわけですが、これにも明確に反しているというふうに思うんです。

 警察庁にお聞きしたいんですが、警察は一般的にこうした活動を行っている、通常業務の一環として行っていると認識していますが、間違いありませんか。

白川政府参考人 お答えいたします。

 あくまで一般論として申し上げますれば、警察は、公共の安全と秩序の維持に当たるという責務を達成するため、関係者と意見交換を行うことはあり得るものと考えております。

藤野委員 そうした業務は通常の業務の一環として行っているということでよろしいですか。

白川政府参考人 お答えいたします。

 警察は、公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で必要な範囲において警察活動を行っておりまして、このような活動を通常の業務と表現したものではないかというふうに思います。

藤野委員 配付資料の2になるわけですが、二〇一五年五月二十六日参議院内閣委員会で、我が党の山下芳生議員の質問に対して、山谷えり子国家公安委員長は次のように答弁しております。「大垣署の警察官が公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で、通常行っている警察業務の一環として事業者の担当者と会っていたものと承知しております」ということなんですね。

 ですから、これは通常の業務の一環ということになります。これは間違いありませんね。

白川政府参考人 お答えいたします。

 警察は、公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で必要な範囲において警察活動を行っているところでございます。

藤野委員 これは通常の業務の一環として行っていたということでありまして、警察関係の大臣の言葉でこう語られたということは大変重要であります。

 配付資料の三枚目を見ていただきますと、それの三段目のところに、高橋参考人、当時、二〇一五年六月四日ですが、こういう情報収集というものは、あるいは情報提供はやっているんだということを繰り返しおっしゃっております。この高橋参考人は後に警視総監にもなられているわけですが、警察自身の言葉で、こうした活動が通常業務の一環だと語られているというのは大変重要であります。

 通常行っている業務の一環ということになれば、全国の警察で堂々とこうした活動が行われている、犯罪行為でも何でもない勉強会などに取り組んでいる市民の個人情報が、まさに警察の通常業務の一環として監視の対象になっている。

 警察庁にお聞きしたいんですが、なぜこうした情報収集や情報提供が通常行っている警察業務の一環になるんでしょうか。

白川政府参考人 お答えいたします。

 一般論でございますけれども、警察におきましては、特に警察署にありましては、管内で発生するいろいろな事象について、例えば暴力団とのトラブルであったり、ある程度の規模の工事に伴うような騒音問題であったり、そういったことを見聞きすることはございます。

 もとより、情報収集に際しましては、先ほど申し上げた、警察の責務の達成に必要な範囲内で行っているものと考えております。

藤野委員 今、暴力団あるいは一定規模の事業とおっしゃいましたが、そうした事業に伴って生じ得るトラブルの可能性について関心を有している、そういうことですか。

白川政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、あくまでも公共の安全と秩序を維持するという観点から、必要な責務を達成する上で、その範囲内で情報収集に当たっているものでございます。

藤野委員 曖昧な答弁をされますので、これは引き続きずっとやるつもりですので、逃げられないと思いますよ。

 配付資料の三枚目を見ていただきますと、二〇一五年六月四日、高橋参考人はこういうふうに答弁しています。

 一般に警察は、管内における各種事業等に伴い生じ得るトラブルの可能性につきまして、つまり各種事業というのはそういう風力発電事業でありますとか道路工事の事業とか様々な事業があると思いますけれども、そういう各種事業等に伴い生じ得るトラブルの可能性について、公共の安全と秩序の維持の観点から関心を有しておりまして、そういう意味で、必要に応じて関係事業者と意見交換を行っております。そういうことが通常行っている警察の業務の一環だということでございます。

こういうふうに当時の警備局長は答弁をしているということです。

 これは極めて重要だと私は思っております。なぜ通常の業務の一環か、その理由、論理が、つまり、道路工事など、道路なんて全国至るところにあります、道路工事などのさまざまな事業に伴い生じ得るトラブルの可能性、道路工事を初めとするさまざまな事業の、かつそれに伴い生じ得るトラブルの可能性、こういうことになってきますと、この論理ですと、本当に多様な、あらゆる生活に関する事象に、あるいは事業、それに伴うトラブルの可能性、こういったものが警察の関心の対象になるということになるわけです。そして、それに基づいて、この岐阜県大垣署のような情報収集あるいは利害関係者への情報提供、こういうものが通常業務の一環として行われる。

 こういう論理構造が当事者の口から語られている、実際の警察の口から語られている。これは極めて重大だと思うんです。私たちが言っているんじゃないんです。これは違法じゃないかとか、これはグレーじゃないかとよくあるわけですが、警察自身が、これは通常の業務の一環であり、なぜならこういう論立てだ、こういうことで来ているわけですから。

 これは、大臣、お聞きしたいと思うんです。今、一般的な話をお聞きしました。そういう論理構造になっております。こうなりますと、大臣、道路工事を初めとしてさまざまな事業に伴うトラブルがありそうだ、可能性がありそうだと警察が思えば情報収集、情報提供は可能になる、これは無限に広がっていくんじゃないですか。大臣、いかがですか。

金田国務大臣 藤野委員の御質問にお答えをいたします。

 お尋ねは、警察の活動内容に関する事柄でございます。法務大臣としては、お答えをする立場にはないものと考えております。

藤野委員 いやいや、共謀罪の審議のときに、対象にならない、対象にならないとあれだけおっしゃっているわけです。先ほどもそういうやりとりがありました。肝心のこういう話を聞いたら、それはもうお答えしませんと。これはとんでもない話だと思うんですよ。

 では、ちょっと具体例で聞いてみたいと思うんですが、例えば、静かな住宅街のそばに大規模マンション建設計画が持ち上がった。警察庁にお聞きしたいんですが、マンション計画というのはこの各種事業に当たるんですか。この事業、いろいろなさまざまな事業に当たるんでしょうか。

白川政府参考人 お答えいたします。

 トラブルが生じ得る可能性とか、具体的などのような事例が当たるかにつきましては、個別具体的の事情により、一概に申し上げることは困難でございます。

 繰り返しになりますけれども、警察といたしましては、公共の安全と秩序の維持の観点から、必要な範囲で情報収集を行うものと考えております。

藤野委員 公共の安全とか言いますけれども、例えば大垣署の事件でいいますと、二〇一三年、一四年段階というのはまだアセスメント段階なんですね。建設計画はまだ始まっていないわけです。アセスメントが行われた段階で、住民の皆さんは勉強会をやっていた。だから、それに伴って何かトラブルが起きるとか建設現場で何か座り込みするとか、そんな話では全然ない段階であります。

 それを、例えば公共の安全と維持などと言って、こんな情報収集ができるとなれば、はるか前から公共の云々という理由づけでこういう行動が正当化されてしまうので、逆に、今、そう言ったということになりますよ。とんでもない話であります。

 結局、個別事案によると。個別事案によるということになりますと、結局警察が判断するということじゃないんですか。違うんですか。

白川政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの岐阜県の事案につきましては、岐阜県警察より、警察法岐阜県の個人情報保護条例の規定にのっとり適正に行っている旨、報告は受けているところでございます。

 どのような事例がそういう情報収集の対象になるかにつきましては、まさに個別的事情によると思いますので、お答えは甚だ困難でございます。

藤野委員 個別の事情というふうにおっしゃるわけですけれども、いろいろなことが事業に当たり得るということなわけですね。二〇一六年の答弁では、道路工事ということまで挙がっております。

 では、例えば競馬の場外馬券売り場とか、あるいは競艇の場外舟券売り場、こういうものは私の地元にも結構あるわけですが、そしてかなり問題になるわけです。こういうものはいわゆる事業、さまざまな事業には当たるんですか。

白川政府参考人 何度も同じ答弁で恐縮でございますが、トラブルが生じ得る可能性等、具体的な事情につきましては、個別具体の事情によりますので、一概に申し上げることは困難でございます。

 ただし、警察は、警察法二条第二項にございますけれども、「その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」と規定されておりまして、私どもの活動はこのようなことに準拠して行っているものと考えております。

藤野委員 大垣署の事案でも、本当に、まだ勉強会あるいはチラシをつくるとか、そういう段階であります。それが、病歴含め、さまざまな情報収集の対象になっていた、こういう具体的な事案なわけですね。

 これが共謀罪というふうになったらどうなるか。

 今はいわゆる犯罪捜査ではありません。今といいますか、この大垣の事案は犯罪捜査ではないわけです。ですから、例えば盗聴という点でも、通信傍受の場合は対象犯罪が確定されておりますから、例えば犯罪捜査でそれに当たれば盗聴の対象になるわけですが、この大垣署の事件はまだ犯罪ではありませんから、そういう対象になってこない。

 しかし、今回、仮に、万が一共謀罪というものができた場合どうなるか。犯罪になるわけです、その計画あるいは準備行為、犯罪になってくる。それが盗聴等々あるいはさまざまな、今回以上に強力な強制捜査の対象になる可能性が出てくるわけです。

 大臣、お聞きしたいと思うんですが、共謀罪の新設というのは、今、こうして犯罪ではない、しかし情報収集の対象になっている、こういうものまで捜査の対象、任意捜査、強制捜査の対象にしてくる、共謀罪というのはそういうものだ、そういう認識でよろしいですか。

金田国務大臣 テロ等準備罪を例に出されましたので、これについてお答えをいたしますと、他の犯罪の捜査と同様に、犯罪の具体的な嫌疑がなければ捜査が行われることはありません。すなわち、テロ等準備罪に該当する行為が行われたという具体的な嫌疑がない段階からテロ等準備罪の捜査が行われることはないわけであります。

 まして、テロ等準備罪については、対象となる団体を、テロリズム集団、暴力団、薬物密売組織などの組織的犯罪集団に限定をしております。一般の方々や正当な活動を行っている団体がテロ等準備罪の適用対象となることはありません。

 したがいまして、御懸念は当たらない、このように考えておる次第であります。

藤野委員 いや、私の質問を全くわかっていらっしゃらないようなんですが、今の段階で、犯罪のはるか以前、犯罪どころじゃないんです、いわゆる勉強会の時点でもう既に警察はこういう情報収集をし、それが通常業務の一環だと言い、しかも、その論理を聞いたら、事業に伴うトラブルだというわけです。

 今の段階で、そういう論理のもとにいろいろな情報収集をやり、そして提供もしているこの警察活動が、共謀罪というものが広く犯罪化されるということに伴って、今は捜査という強力な手段を使わないものが、今度はそういう普通の活動まで捜査の対象になるんじゃないのか、任意捜査、強制捜査、これが私の質問なんです。いかがですか。

金田国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、御懸念は当たらない。

 テロ準備罪に該当する行為が行われたという具体的な嫌疑がない段階からテロ等準備罪の捜査を行うことはないわけであります。そして、テロ等準備罪につきましては、対象となる団体を、先ほど申し上げた組織的犯罪集団に限定をしておりまして、一般の方々や正当な活動を行っている団体がテロ等準備罪の適用対象になることはない。加えて、犯罪の具体的な嫌疑がなければ捜査が行われることはないということで、御懸念は当たらないものと考えております。

藤野委員 いや、もう本当に、そういう答弁では全く今後答弁を維持できないというふうに思います。

 警察が各種事業をめぐってトラブルの可能性があると勝手に判断して、捜査のスイッチが入っていく、これは実態なわけですね。共謀罪が新設されれば、これがさらに大手を振って行われる。そうした共謀罪は絶対に許されない。今後の審議入りは絶対反対ということを申し上げて、質問を終わります。

第193回国会 法務委員会 第10号(平成29年4月14日(金曜日))